【イベントレポート】
ビジョンを実現するための「確固たる志」の築き方
Yahoo!アカデミア学長、伊藤羊一の熱血講義

経営者にもファンが多い、中国・春秋戦国時代を舞台にした大人気漫画『キングダム』。この作品の名シーンや名セリフを引用し、リーダーとしての心技の鍛え方を述べた一冊が『キングダム 最強のチームと自分をつくる』(かんき出版)です。

今回は、この本の出版を記念して、著者の伊藤羊一さんとイベントを開催。現状にどこか不安を抱えながらも、振り返るまもなく仕事に没頭している――そんなビジネスパーソンに向けて「マインドの鍛え方」、「プレゼンの極意」を語っていただきました。

ビジネスパーソンの育成に力を注ぐ伊藤さん渾身の熱血講義の様子をお届けします!

マインドを鍛えるための第一歩は「汝を知る」こと

『キングダム 最強のチームと自分をつくる』の中で、逆境や苦難を乗り越えてビジョンを達成する6つの力として、「志」「行動」「精神力」「仲間」「話力」「信」を挙げている伊藤さん。 この6つのなかでも特に大事なのは「志(マインド)」だと言います。

キングダム 最強のチームと自分をつくる
キングダム 最強のチームと自分をつくる
著者
伊藤羊一
出版社
かんき出版
「年間500冊以上のマンガを読むが、『キングダム』への熱狂は他のマンガの比ではない」と語る伊藤さん。著書では、伊藤さんが心の拠り所とする『キングダム』の41の至言を紹介。

★伊藤羊一さんのフライヤーでのインタビュー記事はこちら

伊藤:ビジネスで成果につながるアクションを起こすには、その土台となるスキルとマインドが大事。スキルがないと結果が出なくて空回りしてしまう。逆にマインドがぶれていると、行動がぶれる。ここでのマインドとは、何かを成し遂げようという思い、つまり志のこと。 ビジネスで中長期的に成果を出し、ビジョンを実現するまでには、途中で困難に何度もぶつかります。そんなとき、志が明確になっていると、迷いなく前に進めるし、壁を乗り越えるための力が湧いてくる。また、志を貫いていると、周囲の人も鼓舞されるので、ビジョンの達成に向けて人を巻き込みやすくなります。だから志は確固たるものにする必要がある。

目に見えないスキルとマインドが、成果を生む行動の土台となる。

伊藤:スキルはビジネススクールに行く、本を読むというように鍛え方がわかりやすい。じゃあマインドはどう鍛えたらいいのか。

マインドを鍛えるというのは、自分の志を具体化し、確固たるものにすることです。マインドを鍛えるために必要なのは「汝を知れ」ということ。自分の使命は何か、自分は何に心躍るのか。自分は何に突き動かされるのか。こうした自分の価値観を知ることで、マインドつまり何に情熱を傾けたいのか、何を実現していきたいのかという志が明確になり、ブレなくなります。

自分を知るのに役立つツール、「ライフラインチャート」とは?

自分の価値観を知るにはどうしたらいいのか。そのために有効なのは過去の経験を振り返ることだと伊藤さんは言います。

人財育成研修でも使われている「ライフラインチャート」は過去の振り返りに有効

伊藤:今の価値観は、過去の経験の積み重ねで形成されてきたもの。だから過去の経験を掘り起こすことで、現在の自分の大事にしている価値観が見えてきます。すると、日々の意思決定で「これでいいんだっけ」と迷ったときに、この価値観が判断の指針になってくれるので、迷いなく信じた道を突き進むことができます。

また、現在の状態をベースに、今後どうありたいのか、何を成し遂げたいのかという未来、すなわちビジョンが見えてきます。

伊藤:もちろん、これまでの自分に縛られすぎるのもよくありません。今とは少し違う自分を形づくっていきたいのなら、現在の延長線上に未来を描くのではなく、現在の経験を少し変えていくことが必要。

じゃあ、どうやってアクションを変えていくかというと、「志(マインド)」を着火剤にし、日々の行動を変えてみる。次に振り返りの時間を設け、新たな気づきを得て、それをもとに行動をさらに変えていく。このサイクルをひたすら回すことでマインドを鍛えることができるのです。
日々の行動が常に改善されるだけでなく、志に裏付けられた言葉や行動によって周囲から「あの人はブレない」と信頼を得られる。
リーダーとなる人はスキルやコミュニケーション能力が高いに越したことはないのですが、決定的に大事なのは「信頼」。だから、信頼を得るためには、マインドを鍛えるしかないんです。

とはいえ、成長につながる行動をしようと思っても、当然、気が乗らない日だってある。僕も週3日くらいやる気が出ないですし(笑)そこで、やる気がない日でも「必ずやる」と決めた行動を実行できるように、「行動規範」を毎日声に出して言うことをお薦めしています。

僕の行動規範は、「心を自由に」「迷ったらワイルドな方を選べ」「ポジティブにガンガン行く」の3つ。この「迷ったらワイルドな方を選べ」は、宮坂学がヤフーの社長に就任したときに打ち出したメッセージのひとつです。これを口ぐせにして、行動の基準にしていくと、ハイリスク・ハイリターンの選択肢から、すぐには逃げない自分へと変わっていけます。
行動規範をつくる際は、信頼している人の言葉や、自分が心に響いた言葉の中で、実際に行動に落とし込んでみてしっくりくるものを選ぶといいですよ。

伊藤:ヤフーでは、濃密な振り返り(経験学習)をするために、「1on1ミーティング」という制度を取り入れています。「1on1」とは、毎週1回、上司が部下と一対一で30分程度対話する制度のこと。1on1ミーティングの肝は、進捗報告に終始するのではなく、部下から想いや能力を引き出すコーチングと、部下がさらに成長していけるように促すフィードバックを行うこと。良いフィードバックのコツが知りたい方は、ぜひ『ヤフーの1on1』(ダイヤモンド社)を読んでみてください。

ヤフーの1on1
ヤフーの1on1
著者
本間浩輔
出版社
ダイヤモンド社

相手の心を動かすプレゼンの極意は、「AIDMA(アイドマ)」

次なるトピックは、「話力(コミュニケーション)」について。伊藤さんはコミュニケーションのスキルとして、「伝わる極意」を紹介。

伊藤:よく「部下に何度言っても聞いてくれない。デキない部下だ」と言う上司がいますが、それは伝え手である上司の責任です。相手に伝わっているかどうかはあくまで聞き手が決めるものなんです。

「言ったから聞いているにちがいない」と考えるのではなく、相手に聞いてもらって、理解してもらわないとダメ。さらにいうと、言われた内容が腑に落ちて、相手が実際に「自分もそんなふうに行動しよう」と思ってもらえるところまでめざしたいですね。

ここで紹介したい「伝わる極意」は、消費者が商品に気づいてから購買するまでの行動を表した、マーケティングのフレームワークとしておなじみの「AIDMA(アイドマ)」。Attention(注目する)、Interest(関心を持つ)、Desire(いいね!と思う)、Memory(記憶する)、Action(行動する)の頭文字をとったものです。

まずAttention。プレゼンの最中に気を惹き続けるには、聞き手がすっと理解できるようなシンプルな言葉を使うこと。そして、Interest。聞き手に話の内容を理解して興味をもってもらうには、ロジカルなストーリー展開が不可欠です。

ですがロジックだけでは人は動かない。そこで感情的に訴えて、具体的にイメージしてもらう。これがDesire。次に、プレゼンの内容を忘れられないように「キーワード化」して覚えてもらう。これがMemoryです。

最後はAction。自分が心からこれを伝えたいと思ったものを、情熱と自信を込めて伝えれば、聞き手は動いてくれるはずです。

講演の最後に伊藤さんは、マインドを鍛え、志を貫くための一歩として「仕事観を問い直し、自分自身の生きる意味を改めて考えてみよう」と締めくくりました。

伊藤さん自身も、自分の志を見つけるまでに試行錯誤を重ねてきたといいます。伊藤さんの志は「自分が何かを達成するより、仲間の笑顔が見たい、誰かの幸せのために生きたい」というもの。この志が、自身の経験から紡ぎだされた揺るがぬものだからこそ、伊藤さんの言葉は説得力があり、聞く人の心を動かすのでしょう。マインドを鍛えることの究極形は、自分の語る言葉や行動が、周囲の人のマインドに火をつけること、そして確固たる志をもった人を増やしていくことにあるのかもしれません。

フライヤーでは今後もさまざまなイベント、読書会を開催予定です。開催スケジュールはフライヤーのFacebookページ(https://www.facebook.com/flierinc/)をご覧ください。フライヤーのPeatix(http://flierinc.peatix.com/)もフォローしてみてくださいね。

キングダム 最強のチームと自分をつくる
キングダム 最強のチームと自分をつくる
著者
伊藤羊一
出版社
かんき出版

登壇者プロフィール

伊藤 羊一(いとう よういち)

◎――ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリストYahoo!アカデミア学長。株式会社ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年日本興業銀行入行、企業金融、事業再生支援などに従事。

◎――2003年プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、グループ事業再編などを担当した後、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。

◎――2015年4月ヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。

◎――年間500冊を超える漫画を読むほどの漫画フリーク。本書はその中でもこよなく愛する『キングダム』のメッセージを通して、約30年間のキャリアで培ってきた「仕事力の鍛え方」をまとめた1冊。

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文責:松尾 美里 (2017/09/13)
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