相手のやる気に火をつける技術「ペップトーク」とは?
たった1分で部下の力を引き出す秘訣

大事なプレゼンや交渉といった、ここぞという勝負の直前に同僚や部下を元気づけたい。とはいえ、自己流の励まし方に頼っていては、良かれと思って伝えた言葉がかえって相手を委縮させてしまうことも少なくありません。そんなときに役立つのが、相手のタイプや状況に合わせて、やる気に火をつけることができる技術、「ペップトーク」です。

「同僚や部下をやる気にさせたい」、「本領を発揮できるチームをつくりたい」。そんな願いをかなえるために、『たった1分で相手をやる気にさせる話術 ペップトーク』(フォレスト出版)の著者、浦上大輔さんにペップトークの真髄をお聞きしました。

ペップトークはなぜ人のやる気を引き出せるのか?

日本ではあまり耳馴染みのない「ペップトーク」。ペップトークとはズバリ何なのでしょうか。

アメリカのスポーツの映画で、試合前にチームの監督やコーチが選手たちを鼓舞するシーンを見たことはありませんか。ペップとは英語で「元気・活気」の意味で、本番前に緊張し身震いする選手に向かって、心に火をつける言葉掛けのことをペップトークといいます。
発祥地アメリカでは、ペップトークの人気ランキングサイトがあるくらい一般的な言葉で、メジャーリーグのヤンキースとレッドソックスの対戦では、子どもが選手に向けてペップトークをして観客を沸かせるコーナーがあるほど。

ペップトークを日本でもっと広めたい、誰でも簡単に実践できる形にしたい。そこで、『たった1分で相手をやる気にさせる話術 ペップトーク』では、ペップトークの手順をわかりやすく次の4つのステップにまとめました。
①受容(事実の受け入れ)→②承認(とらえかた変換)→③行動(してほしい変換)→④激励(背中のひと押し)という順番に沿って励ましていくと、緊張や不安のさなかにいる相手が、緊張を解き、本来の力を発揮できるようになるのです。

相手をやる気にさせるペップトークの4ステップ(フォレスト出版)
たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
著者
浦上大輔
出版社
フォレスト出版

この4つのステップに沿って励ますと、なぜ人のやる気を引き出せるのでしょうか。

一番のポイントは、励まされる側、つまり受け手の状況や感情を見極めて、それに応じた言葉掛けを行っているからです。受け入れ態勢が整っていないと、激励の言葉が逆効果になるケースも少なくない。だから最初の「受容」のステップで、受け手の状況や感情をじっくり観察して見極めることが必要です。例えば、相手が「今、不安でたまらない」という状況ならば、まずは「不安に感じているんだね」と、その感情を受容していることを言葉で示してあげるのです。

浦上さんは理学療法士だったころ、患者を自己流で励ますことに限界を感じたことが、ペップトークを学ぶきっかけになったという。

今まで、研修やコーチングといった成長支援の場で、物事の捉え方を変えることで出来事の意味を変える「リフレーミング」といった個々の技術は活用されていました。これに対し、ペップトークの特徴は、リフレーミングや受容といった技術を、相手が自分の力を最大限発揮できるように励まし、元気づけるための方法として体系化したという点にあります。

これまでの研修やコーチングといった成長支援の場では、たとえば緊張している人には、「誰だって緊張するよ」という「共感」や、「緊張するのは本気の証拠だよ」というような発想転換を促す「リフレーミング」 といった技術が活用されていました。
ペップトークではこれに加えて、「ベストを尽くそう」「楽しんでおいで」と、相手に成功をイメージさせる「行動」を促します。共感、発想の転換、行動の3つがセットになっているので、相手の心が動きやすいんです。

ペップトークがアメリカで普及したワケ

アメリカでは、スポーツ界だけでなくビジネスの領域でもペップトークが日常的に使われているといいます。これほど幅広く普及したのはなぜでしょうか。

1つは、相手の良いところを見つけて伝える文化があるからでしょう。例えば野球で盗塁を失敗してもそれを責めるのではなく、「Nice try!」と挑戦した勇気を積極的に称えます。

2つ目の理由は、多様な国籍、民族、文化的背景をもった人で構成されている国だから。特にスポーツ界は多様性のるつぼですよね。英語がネイティブでない人も多い。そこで、いかにシンプルな言葉で、一人一人の心に火をつけるかが重要になります。この試行錯誤が今のペップトークの原型をつくっていったのでしょう。

ビジネスの世界でも同じく、多様なメンバーの力を発揮させて1つのゴールに向かわせるには、「良いところをシンプルに称える」ことが重要だという考えが浸透していったのだと考えています。

ビジネスですぐ使える! 効果的なペップトークの秘訣とは?

同僚を元気づけたいとき、効果的なペップトークを行うためのポイントは何ですか。

ペップトークが得意な人の共通項は「一歩引いた自分」をもてているということ。アドラー心理学に、「感情で伝えることと、感情を伝えることは別」という教えがあります。

よく聞くのは相手を励ますつもりが逆に叱責してしまった、という場面。例えば、ある上司が、「成果がイマイチな部下のやる気を引き出したい」と考えていたとする。感情をむき出しにして「なぜ、もうひと踏ん張りできないんだ!」と、部下に活を入れた。すると、いくらそれが強い期待の表れだとしても、部下はやる気を出すどころか、「怒鳴られた」ということだけが記憶に残って、委縮してしまうはず。

たしかに。部下の立場だったら次の失敗を恐れてしまいそうです。

そんなときはこんなふうに伝えると良いでしょう。「君なら本気を出せば必ずやり遂げられると信じている。でもあと一歩のところで手を抜いているようで、それをもどかしく感じている。だから今後は●●をしてほしい」。
このように感情をむき出しにせずに、冷静に自分の感情と相手への期待を伝えてみる。すると相手は、次回から具体的にどんな行動をとるべきかにフォーカスできます。

感情をぶつけそうなときは、自分の「あり方」を整えよ

話し手がつい感情的になってしまったときの対処法はありますか。

相手に感情をぶつけているときというのは、自分と相手にクローズアップしすぎて周囲が見えていないとき。そんな場合は、自分と相手を俯瞰する「第三者的な自分」を自分の外側に置くとよいでしょう。すると「今、怒りにのまれそうになっている」などと、自分の感情をフラットに捉えられるので、伝え方を調整しやすくなります。

これは、インテルやグーグルといったアメリカの名だたる企業で推奨されているマインドフルネスの発想にも近いですね。評価や価値判断をくださずに「今、ここで起きていること」にのみ意識を向ければ、自分の「あり方」を整えることにつながります。

あり方を整える、ですか。

そうです。あり方が安定している状態とは、肝が据わっているとか、軸がブレていない状態のこと。あり方を構成する要素は、その人の実績や、言行一致の度合いなどがあります。その道のプロの言葉なら、受け手の心に響く度合いも違うでしょう。

また、話し手の言葉と実際の行動が普段から一致していれば、「あり方」がより確固としたものになる。そうすれば、話し手の言葉の説得力が一気に増すのです。

さらに、話し手自身が心や体の調子を整えておくことも、ペップトークの効果を発揮するために重要です。睡眠不足で疲弊しているとか、家族と喧嘩して心の余裕がないとか、こうした状態で同僚や部下を励ましても、相手は違和感を覚えてしまいます。まずは、人をやる気にさせる前に話し手自身が、心の状態を整える必要があります。

欠けているものではなく、今ある「リソース」に目を向けさせる

リーダーがペップトークで意識すべきポイントは何ですか。

大事なのは部下が「リソースフル」な状態をつくることです。リソースとは、知識や経験、協力者といった、その人が本来活かせるものを指します。こうしたリソースを最大限出し切ることができていて、自信に満ちた前向きな状態を「リソースフル」といいます。

リソースフルでないとき、人はつい「パズルの欠けたピース」に注目してしまう。そんなときこそ、メンバーに「今あるもの」に目を向けるよう促すのがリーダーの役割です。これを「あるもの承認」と呼びます。例えばチームでプレゼンに臨む前に「練習不足」を気にしているようなら、リーダーはチームがすでにもっているチームワークの良さや応援者の存在についてふれます。

緊張や不安といった心理的な壁を見ないようにするのではなく、今あるものに目を向けることで気分を切り換え、その人本来の力を発揮する勇気を与えていく。これこそがペップトークの真骨頂だといえるでしょう。

リソースフルな状態を促すこと、意識してみます。貴重なお話をありがとうございました!

たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
著者
浦上大輔
出版社
フォレスト出版

浦上 大輔(うらかみ だいすけ)

魂に火をつける講演家。一般財団法人日本ペップトーク普及協会専務理事。一般社団法人日本朝礼協会理事。

1969年東京都生まれ。北海道大学で運動生理学(健康体育科学修士)、理学療法学を学び、運動指導のスペシャリストとして、学校体育、リハビリ医療、高齢者介護の現場で活躍。Strechpole®の株式会社LPN代表取締役、一般財団法人日本コアコンディショニング協会理事長を経て、ペップトークの第一人者岩﨑由純氏と一般財団法人日本ペップトーク普及協会を設立。

人をやる気にさせるペップトークの講演・研修を企業、学校、医療・介護、行政、各種団体で行い全国を飛び回る。持ち前の発想力と巻き込み力でコーチングの第一人者平本あきお氏とリーダーコミュニティ、朝礼の第一人者大嶋哲介氏とともにオンライン朝礼コミュニティーを全国に展開中。

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文責:松尾 美里 (2017/08/28)
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